Smiley face

 天皇陛下をはじめ、皇族方の活動や皇室に関連する出来事を過去にさかのぼって紹介する「皇室365」を始めました。皇室のあり方が問われる中、公務や宮中行事などのトピックを毎週、担当記者が詳しく読み解きます。

6月30日(2002年) 天皇、皇后両陛下(当時)がサッカーW杯決勝を観戦

 2002年のこの日、天皇、皇后両陛下(当時)は横浜国際総合競技場(横浜市)を訪れ、サッカーの第17回ワールドカップ(W杯)決勝を観戦した。日本と韓国で初めて共同開催された同大会。約6万9千人の観衆が詰めかけ、お二人は韓国の金大中大統領夫妻(当時)とともに歴史的一戦を見守った。

写真・図版
第17回ワールドカップ(W杯)決勝を観戦に訪れた天皇、皇后両陛下、韓国の金大中大統領と妻の李姫鎬(イ・ヒホ)さん(いずれも当時)。後ろは高円宮さまと久子さま=2002年6月、横浜国際総合競技場

 当時、筆者は横浜総局の取材陣のひとりとして会場にいた。ブラジルとドイツの強豪がW杯で初対戦することもあって、試合前から異様な高揚感が広がっていたのを思い出す。両陛下と大統領夫妻がロイヤルボックスに登場した際に歓声と拍手があがり、お二人の楽しそうな笑顔が印象に残っている。

 日韓共同での開催が決まったのは1996年5月。いまだ実現していない天皇の訪韓に期待が高まるなど、皇室の動きにも注目が集まった。

 99年12月には、お二人が東京・国立競技場で行われたサッカーの天皇杯全日本選手権準決勝を観戦。天皇のサッカー観戦は昭和天皇の東西対抗戦(47年。当時、皇太子だった天皇陛下も同行))以来52年ぶりで、日韓W杯に向けた機運を高めた。

写真・図版
サッカーの第17回ワールドカップ(W杯)決勝のドイツ―ブラジル戦を観戦に訪れた韓国の金大中大統領、妻の李姫鎬(イ・ヒホ)さんと、貴賓室で並んだ天皇、皇后両陛下(いずれも当時)=2002年6月、横浜市

 日韓W杯を2カ月後に控えた2002年4月の園遊会には、Jリーグの川淵三郎チェアマン(当時)が招かれた。川淵さんが「準備の方は順調で日本代表チームさえしっかり勝てば国中盛り上がると思います」と伝えると、天皇陛下は「よい大会になって日韓の親善も進められると、本当によいと思いますね」と語った。

 同6月4日。日本代表の初戦となるベルギー戦は皇太子ご夫妻(現在の天皇、皇后両陛下)と、ベルギーの皇太子夫妻、常陸宮ご夫妻、高円宮ご夫妻が観戦。同26日の準決勝は皇太子ご夫妻、高円宮ご夫妻、常陸宮妃華子さまがロイヤルボックスから観戦した。

 ドイツとブラジルの決勝は、ロナウドの2得点でブラジルが勝利。2大会ぶり5度目の優勝を飾った。決勝戦の夜、両陛下は宮内庁を通じて感想を公表した(要旨)。

 日韓共催の大会がとどこおりなく終了したことを喜び、この経験が、日韓両国民の親善関係の増進に役立っていくことを期待しています。

 初めて決勝トーナメントに進んだ日本選手の健闘をたたえます。またトルシエ監督の4年間の努力を深く多とします。

 参加した選手が、力を尽くして互いに競う姿には心を惹(ひ)きつけられるものがあり、また試合後、相手側選手と交歓する姿にもしみじみスポーツの良さを感じさせるものがありました。優勝したブラジルと準決勝にまで勝ち進んだ共催国韓国にも、心からの祝意を表します。

 国内の各地で、人々が外国選手を親切にもてなしたことも、うれしいことでした。4年後のドイツでの大会が楽しみです。

   ◇          …

共有